[:Glass/プテラノドン
たとえ何もかも盗られてしまっても、親身な耳だけは残しなさい。
と死んだ彼女の祖母は言った。
祖母が死んだその時、彼女の役目は、数百人の親戚たちを前に語る
老婆の口元にマイクを近づける簡易式マイクスタンドだった。
今にも消えそうな、吐息、囁き、吐息、遠のく意識。
老婆の表情が微笑んでいるように見えたのは気配なんかではなく、
正真正銘のマジ。で、轢き殺されたアライグマの死体もある路上で
夜通し行われる道路工事の、絶対致死の眩しいライトを
直で当てられたように、不思議な開放感と真っ白な不安を感じた。
しかし、生に不安はつきものだし、不安は闇を知るための
第一段階に過ぎない。い
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