骨と首の話 その4(完)/hon
ののけの類に化かされたような気分だった。あまりに急激に日常へと放り出されて、これまでの全てが白昼夢にすぎなかったような印象である。つい先ほどまで、私は物言う生首としゃべっていたような気がしたが、本当にそんなことがあったのか疑わしかった。
感覚や記憶はひどくおぼつかなく不安定なものになっていた。代わりに、体の痛みがあった。蓄積された体の痛みは今までのことが本当のことだと告げており、その痛みだけが私にとっては格別にリアルであり、痛みによって、私は確かに首を運んでここまで来たのだろうと、かろうじて考えることができた。
私はしばらくそこに佇んでいた。まだ、何かがあるべきではないか、と思っていた。も
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