骨と首の話 その4(完)/hon
 
いていた。
「街は良い。多くの人や地形が観察できるからな」彼は風呂敷の中でのんきな事を言った。「私は人間が好きなんだ」
 そういえば、私も昔は街をぶらぶらと目的もなく出歩くのは嫌いではなかった。いつしか外出が億劫になっていた。それは、骨が軋む体の痛みのせいもあったかもしれないが、今にして思うに、関節が痛み始めるのと、外出が億劫になるのと、果たしてどちらが先だったろうか。両者は相乗効果で互いに強まっていく性質のもののようだ。
 ついぞ、私は人間が嫌いになっているようだが、それでしんどい思いをしていれば世話はないことだ。いつも私は物事を複雑に考えすぎている。もっと単純に生きたい。
 死は変容だ
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