私は鯨の骨になる。/皆川朱鷺
海は黒かった。
私が港から見るとそれは海、というより、ただ誰かの巨大な血液の湖にいるような感覚を催した。
異様に粘り気があった。
それらがどろーり、どろーりと、ゆっくり呼吸するようだ。
腹の上下作用のよる波が、岸辺の光に照らされ、脂っこく反射する。
排気ガスで灰色にくすんだ町から、海に向かったところにその公園がある。
日本にしてはだだっ広い手入れされた芝生を歩き続けると、海に直面する。
湾になっている上に防波堤まであるのだから、湖のような静かな海だ。
その海に添う岬の先まで続く遊歩道は、出来てからまだ日も浅く、小奇麗で人工的な美しい田舎の風景が楽しめる。
だだっ広さがそのいい
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