さいごのおもいで/狩心
 
水辺に座る人魚が、ぽちょんと水中に潜る・・・
 ドアをばたんと閉める音・・・わたしは出て行く
 パズルのような空に、ぽつんとドアが取り残されて
わたしが席に座ると、あなたが席を立つ、
コホンと咳き込んで、空中に消える
 開けられたドアから、あなたがポテンと落ちる
 広大な砂漠をあなたはひとり
 そう、ひとりで歩いて行く・・・
 カメラは動かないままで、あなたはどんどん遠ざかって
 小さくなって・・・見えなくなって・・・
あなたが席に座ると、砂漠の風が劇場を包んだ
ちりちりと音を立てて、口の中はざらつき始める
呼吸するのも苦しくて・・・
わたしの体は溶けて、赤い席を水で濡ら
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