さいごのおもいで/狩心
 
濡らす
 せんせい・・・もうわたしたち・・・
あなたは砂嵐の画面を見つめたまま、強くわたしの手を握り、
始まらない映画を、待ち続けていた
あの時ふたりで、映画の中へ行けばよかった、
あの時ふたりで、消えてしまえばよかった・・・
それからというもの、わたしはずっと、映画の中を生き続けていて
あなたが現れない劇場に向かって、ひとり叫び続けている
観客はもう誰もいなくて、そう、シーズンが過ぎたから、
古い映画は誰も見に来ないの・・・
わたしの現実は、音を立てて崩れた
 今日も一輪、黄色い花を
 あなたの傍に、置いてきました
 花の香りがわたしを運んで、
 冷たく硬い石の中に、染み渡る事を願って、
あなたがコホンと咳き込むあの仕草、わたし今も真似してるんだ
みんながあなたを忘れても、わたしはあなたを忘れない
あなたはわたしの中で、ずっと生き続ける

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