夕凪ノスタルジア/山中 烏流
 
僕の右手が
何度も触れようとした、空の隅っこは
夕凪に吹かれて
いつも少しだけめくれていたのを
僕は、微かに覚えている。
 
 
その話を
黙って聞いていた君が
急に、眠りにつくだなんて
言ったりしたものだから。
 
僕は、夕凪に飛び込むための台を
君が眠るよりも少しだけ早く
探しに行かなくては、ならなくなった。
 
 
透明な空の向こうで
知る筈もない誰かが
高々と松明を掲げているからこそ、
あの夕日が見えるのだ、と。
 
そうして、
君か僕がそう言ったその数分後には
知らない青年の溜め息で
その松明は消えてしまうのだ、と。
 
 
結末を
[次のページ]
戻る   Point(7)