季節の散歩術/岡部淳太郎
 
収穫の季節であり、滅亡への静かな予感に打ちふるえる季節でもある。収穫と滅亡、いっけん相反するような二つは密接に関わりあっている。満月が満ちた次の瞬間から欠け始めるように、完成とは滅びへの序曲でもあるのだ。
 こうして見ると、人が秋という季節に感傷を覚えるのも当然のことであり、そんな季節に行なう散歩もまた感傷的にならざるをえない。一歩ずつ道を踏みしめていると、これまで過ごしてきた季節では聴くことの出来なかった音が足下から絶えず聴こえてくるようになる。それは枯葉を踏みしめる音。枯れた末に道の上に落ちてしまった葉の、水分を失くして乾ききった身体が鳴っている。葉の屍骸を踏みしめている。一度死んで枝から離
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