季節の散歩術/岡部淳太郎
 
ら離れて力なく横たわったものを、踏みしめることでさらに殺していく。秋の散歩とは、そうした滅びの音に和していく行為でもある。あなたは歩く。歩きながら、すでに死んでいるものをさらに容赦なく殺していく。風はふるふるとふるえ、虫たちは枯葉の屍骸の堆積の中に隠れて、じっと息を潜めている。まるで自らの犯した罪が露見するのを恐れているかのように、それらの罪への懺悔をするかのように、彼等はじっとうずくまっておとなしくしている。やがてあなたも埋もれていく。散歩をしながら、自らの「歩」をそこらじゅうに「散」らばらせながら、あなた自身も滅亡の堆積の中に静かに隠れていく。秋の散歩が気楽なのは、過ごしやすい気候などのせいだ
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