季節の散歩術/岡部淳太郎
いだけではなく、もしかしたら死という絶対的な静寂が訪れ始めていることへの安心感にも理由があるのかもしれない。
しかし、ただ打ちふるえて滅びへの道を歩むだけではない。あなたの「散」っていった「歩」は、あなたの感情を乗せて、葉の屍骸の上に静かに降り積もる。まるで眠る者の上に毛布をかけるかのように、あなたの「歩」はあなたが歩いた先々で滅亡の上に安寧を上塗りしていく。それはもしかしたらもうひとつの果実。誰かの手によって収穫されるべき小さな完成であるのかもしれない。
冬
この厳しい季節を潜りぬけるのは容易なことではない。それをただ沈黙の季節であると言い切ってしまうのは、あまりにも安易
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