季節の散歩術/岡部淳太郎
 
たは夏の風景を眺める、夏という季節を鑑賞する者となる。そうすることによって、初めて夏はあなたにいままで隠していた優しさを示す。歩くことに疲れたら、木陰に入って休むが良い。あなたはひとりの人であり、夏はあなたの生を彩る風景である。


 秋

 秋はもっとも気楽な季節である。その気楽さは夏でも冬でもない、中途半端な季節であるということに起因している。あまりにも暑すぎたりあまりにも寒すぎたりといった厳しい気候の中では、このような気楽さは生まれようがない。中途半端さというものは人を気楽にさせる。その中で思う存分気ままに散歩を楽しむことが可能なのだが、秋とはただ気楽なだけの季節ではない。秋は収穫
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