季節の散歩術/岡部淳太郎
 
ている時(この場合はそれぞれの季節の中にいる時)、大抵の場合は自らを状況の中に溶けこませているものだ。自らを状況の一部としていて状況の中の駒のようなものとして動いている。だから客観的に風景を眺めるなどということは望めない。その風景を客観視するということを、あえて成し遂げてみるのだ。そして、自らを単にひとつの生命体であると認識し、その孤独の中で自らを強く(夏の太陽にも負けないほどに強く)保つのだ。そうすると、夏はあなたの皮膚を照らすだけであなたの心まで侵略することはない。強靭な孤独を得ることで、夏に打ち克つのだ。そして暑さにあおられて歩調を速めてしまわないように、自らの速度でゆっくりと歩く。あなたは
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