季節の散歩術/岡部淳太郎
人の間にある存在であり、その「間」という立ち位置には時に気温では計れない暑苦しさが生じることがある。そんな暑苦しさから逃れたくてひとりで外に出てみても、また別の種類の暑苦しさが待っている。とても気楽な散歩というわけにはいかない。
また、夏の暑さは色で言えば赤であり、それは血の色を連想させる。殺戮と闘争の色。そんな色の前では、勝利こそが正義であり真実であるということにもなりかねない。散歩という気楽な作業はもともとそういった勝負事とは無縁であり、だいいち散歩にはゴールというものがない。勝負は勝つか負けるかという単純なゴールがあらかじめ設定されているから、散歩とは明らかに異質である。よって、やや強引
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