季節の散歩術/岡部淳太郎
 
ことではないだろう。歩いて、いつもと同じように散歩して、朝の霜や夜の雪に足跡をつけていく。そうすることが、もしかしたら次の生への道しるべになるかもしれない。この地上のあらゆる生が一時的な仮死状態から脱してふたたび萌え出る時に、寒い季節につけられた足跡が手がかりになるかもしれない。そう考えること、自らの生や時間だけではなく、他のあらゆる生とその時間について思いをめぐらせて歩くこと、そうすれば、この季節の厳しい寒さもさほど苦にはならないかもしれない。沈黙は饒舌への前奏であり、一時的に死のように思える状態に身を落としていることには意味があるのだ。だからこそ、歩くことが出来る。歩いて、気ままに散歩して、「
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