季節の散歩術/岡部淳太郎
 
。それが散歩であり、文字通り「歩」を「散」らして無言の足跡を世界につけていく。
 だが、なぜ散歩なのか? こんなごみごみとした複雑に入り組んだ時代にいまさら吟遊詩人でもあるまいという意見もあるだろう。もっともなことだ。そうした疑問には、「逆にこんな時代だからこそシンプルに散歩なのだ」と答えておこう。
 さて、ひと口に散歩と言ってもそれはいくつかの種類に大別することが出来る。その分け方も様々に考えられるだろうが、ここでは季節による分け方で考えてみたいと思う。もっとも、本稿はルソーの『孤独な散歩者の夢想』のような文学的価値のあるものではありえないので、大仰に構えることなく気楽に書き進めていきたいと
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