草むらの記憶(あるいは水筒の中の現実)/Tsu-Yo
先を道なりに進めば記憶の街道に行きあたります
トランクの中で腐敗し始めている男の死体を
埋葬するために其処へ急がねばなりません
運転手さん私たち同じ痛みの上を走っているのですね
時速150キロの衝動を捨てられなかった痛みを
あなたは知っているはずです
運転手さんトランクの中で腐っていくあなたの人生に
今こうして立ち合えたことをとても嬉しく思います
運転手さんかつて少年だったあなたも私も
本当は誰一人、誰でもなかった草むらの記憶の中へと
帰っていくためにジャックナイフを胸に突き刺したまま
*
記憶の中では常に新しい街や新しい国が
創られ続けているが
その草むらが失われ
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