草むらの記憶(あるいは水筒の中の現実)/
Tsu-Yo
われることはない
少年がぶら下げている水筒の中の狂気と
世界中に溢れている狂気の濃度は
浸透圧の関係で素晴らしく保たれていて
例えば少年の母親と少年の父親が出会う前に
父親が殺されてしまっていたとしても
追憶の草むらには阪神タイガースのキャップを被った少年が
佇んでいるはずでありその水筒の中にはやはり
充分な殺傷能力を秘めたジャックナイフが
かつて少年だった男の胸を突き刺すために存在し続ける
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