サイレン/黒田康之
 
とこれからの二人はすれ違ってゆく。彼女は運動生理学を学びたいと考えているし、僕は薬学を学びたいと思っている。志望校の所在地はまったく別で、毎日の実現のほかに、今は来るのかわからない未来の実現のために、僕は毎日の中で学んでいる。どうでもよければ、何とでも過ぎてしまう時間の中で息をしながら。瑣末である勉強を擦り、磨き上げている。きっとそうだ。さようならをいうことがわかっていて、同じ時間を共有しようとしている。この二人にも遠からず天災が起こって、何かしらの道順を組み替えていくのだろう。でも今が幸せなのだ。さまざまな人や場面が浮かぶ中で、冷静に僕は晴佳の姿を見ている。たとえ組み替えられた道順であっても、何
[次のページ]
戻る   Point(0)