サイレン/黒田康之
 
回り始めた。いろんな人が頭の中にたくさんたくさん浮かんできた。横を走る仲間の顔も目の前にあったし、クラスメイトの顔も浮かんだ。中学の友人も、転校前の友達の顔も浮かんだ。尾比と愛衣ちゃんはどうするのだろう。どちらかが死んだら、彼らが興味と快楽を求めて寝たのでないとするとどうなるのか。新たな生が生まれる前に、離別を向かえる愛し合う命。愛衣ちゃんのかわいいらしい顔が、尾比の死という悲しみによって苦痛で顔をゆがめている場合。逆に怪我の苦痛に責められて、自らがこの世を去っていく場合。そこに生じる可能性のあるすべての感情めいた、この夕焼けのような、暗転する赤。僕には今確かにペダルをこぐ足があって、こうして伸び
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