サイレン/黒田康之
 
それでも速度を合わせて自転車をこいだ。土手の上を自転車で走りながら、僕はいろんなことを思った。まず思ったのは父さんと母さんのことだ。当然、今地震になったら、すぐには会えない。もし、地震で家が崩れたら、誰も下敷きにならなかったとしても、たくさんのものがなくなってしまう。僕にとってはアルバムやPCや本などだけれど、僕にとっての宝物と同じのが父さんにとっての家なのかも知れない。確かに一生一度の買い物なのだから、普通の場合。僕の家が崩れた場合。藤野の家がそうなった場合。クラスメイトの家がそうなった場合。そして誰かが死んだ場合。何かのケーススタディーがこの上もなく高速で、僕の頭から始まり、手先や体中まで回り
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