サイレン/黒田康之
 
されてきた大地震なんだなと、僕は思った。ちょうど同じくらいにみんなも思ったらしく、先生が、「バットとかは俺の車で積んでいくから、お前らはすぐに家に帰れ」と言い出した。僕たちはあわてて先生の車に全部を放り込んだ。でも何だか僕は冷静で、ドキドキもバクバクもしてはいなかった。それでふと思ったのは、このまま自転車で帰る途中に本当の大地震が来たらどうなるのかということと、家に帰るよりも学校にいたほうが安全なのではないかということだった。その時、小渡先生だけが安全なところに帰るような気がして、ふと、突き放されたような気持ちになって動揺した。でも、動揺はそれだけだった。藤野はあせっているようだった。僕たちはそれ
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