サイレン/黒田康之
 
れていた。練習が始まって小渡先生が来たころには、空はだんだんと赤みを増してややどぎつい夕焼けとなっていた。そうして守備練習を始めてしばらく経った時、川原のあちこちでサイレンが鳴り出した。児童帰宅時間のそれとはまったく違って、切迫感のある音だった。
「ウ・ウ・ウ・ウ」
と、鳴ると、「こちらは防災江ノ原。ただいま平成関東大地震の予兆が発見されました。住民の方は速やかに避難体制に入ってください。避難の際は落ち着いて冷静な行動をお願いします。くり返します……」という放送が入った。みんなきょとんとしていた。放送はエンドレスにくり返された。何度目かの放送を聞いて、ああ、これが小学校の頃から僕たちが訓練され
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