彼は殺し屋/相良ゆう
 
彼は殺し屋
40人の教室にやってきた
先生が連れてきた
私たちは目を伏せた
選ばれないように
選ばれたらお仕舞いだ


彼は殺し屋
黒板の前を行ったり来たり
吟味するように行ったり来たり
私たちは俯いて
目が合わないことを祈っていた
震える手で祈っていた


彼は殺し屋
教卓で何か話している
笑顔で何かを話している
右手には大きな黒いライフルが
肩の辺りを無邪気に弾む
耳にはなにも聞こえてこない


彼は殺し屋
不気味な笑みを浮かべてる
狂いそうなほど恐ろしくて
不思議に惹きこまれてしまう
私は怖いもの見たさで
ちらりと目を上げてしまった
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