花について三つの断章/前田ふむふむ
 
青い空は、望まれなくても、
そこにあった。
望まれたとしても。――

季節を間違えた向日葵の群生が、
右に倣い、左に倣い、
つぎつぎと、花を咲かせている。

   3

落陽を忘れて、――
青い空。
朝顔の蔓が、空をめざす、
   生をめざす、死をめざす。
本能をほどいて、十二の星の河を渡る間に、
抑えられない曲線をのばして、
石の思想を弓のように折り、
狂うように、
シンメトリーの道徳的な空白を埋めている。
やがて、若さを燃やし尽くして、
流れる血が凍るとき、
底辺だけの図形的な土に馴染み、
跡形もなく、身体をかくす。それは――、
植物は、人の欲望に
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