花について三つの断章/前田ふむふむ
望に似ている。
朽ちていった夕暮れのような終焉も、
すべてを見届けて、飛び立つ梟も、
ふたたび、朝の陽光とともに佇む、黎明が、
いっせいに芽吹くとき、
渇望する書架の夢は、途切れることなく、
みずのにおう循環を、
永遠のなかで描いているのだ。
その成り立ちに、死という通過点は、
あの稜線に沿って放つ、
ひかりの前では、一瞬の感傷なのだろうか。
花壇が均等に刈られた家では、
喪中を熔かして、
家族が死を乗り越える午後に、
鳥さえも号哭して、
すべてのあり方が、過去のなかの始まりを見据えている。
その行為は、死者のために有るのでは無い。
――説明的な文脈がすぎる。
庭――。
勢い良く若さを空に向けている
あかみどりのつらなりに、
白い波が、断定の傷を引く。
椿、金木犀、さざんかの木が包帯を巻きながら、
包帯を切る、訃報の鋏は、
庭のすべてのときを繋いでいる。
新しい空に向けて、
気高くりんどうが、一輪、生まれた。
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