花について三つの断章/前田ふむふむ
わたしを吹きつける。
心地よい、湿り気が聴こえる。
あれは、熱望だったのかもしれない。
針のように胸を刺した、約束だったかもしれない。
フクジュソウの花が、
わたしの身体を足元から蔽い、
一面、狂おしく咲いている。
2
愁色の日差しが川面を刺すように伸びて、
眩しく侵食された山を、
父の遺影を抱えてのぼった。
その抱えた腕のなかで、
わたしが知る父の人生が溢れて、
暖かい熱狂と、冷たい雨のようなふるえが、
降下する。
滲む眼のなかに、黒く塗りつぶした、
五つの笑顔を束ねれば、
遺影に冷たいわたしの手が、やわらかく
喰いこんでくる。
青い
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