花について三つの断章/前田ふむふむ
 
だけ、
小さな掌ににぎる、あまのがわをめざした。と、

それに飽きると、ときには、暑さをしのぐ、
陽炎のような風鈴を並べて、
わたしを、
赤い蜜月の夢のなかで浮かぶ、しなやかな欄干に誘う。

誘われる儘に、橋を渡ろうとすると、
あなたは、冬に切り出した花崗岩の巨石を積んだ、
瓦礫船を横切らせる。
取り分け、翼のように広がる波は、
いっしんに、みずおとを、わたしの胸に刻み付けるが、
一度も、波たつことはなく、
悠揚な川は、すでに、みずがないのだ。

ふるえながら、戸惑っていると、
乾いた頁が剥がれて、題名を空白にした詩行の群が、
交錯する河口の風のように、
わた
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