手紙/山中 烏流
 
微笑むことを覚えた君の
行く先に、私はいますか
 
 
その瞳が
礫(つぶて)を落とす度に
私が泣き声をあげることを
君はきっと、知らない
 
鼓動が早まる度
消えることを望む私の
その耳元で、
命を願うものだから
 
 
取り繕う指先が
震えていたことに
未だ、気付かないふりを
している
 
君は大人になる
私が願うよりも速く
君は大人になる
私が消えるよりも、速く
 
 
 (君の、進む道の先に
 (私の足跡はありますか
 
 (君の、紡ぐ歌の中に
 (私の名前は、
 
 
人を愛すことを覚えた君の
行く先に、私はいますか

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