小鳥の巣/千月 話子
ら小鳥の群れを眺める
逃げ延びて繁殖したセキセイインコの木
葉桜の緑の合間から新種の花が咲いて
国花の木が ざわざわと不安げに揺れていた
みなみはカナリアの形無い耳元で
「ここは どこですか?」と聞いてみる
彼の口ばしから丸い粟が零れ落ち
古い畳目に埋もれて
ああ ここは小鳥の巣になるのだ と
南国の湿った空気のような溜息をついた
人の身体では暑過ぎる日々
みなみは背中で眠る小鳥が上下して
オレンジ色の炎のように揺らめいているのを
鏡越し 横目で見ていた
四角い窓の外 取り壊されるアパート
微かに聞こえる 小鳥の声 羽音
用意されたクレー
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