逆巻く酒巻/佐々宝砂
気にしなかった。逆巻くことこそ重要なのである。とりあえず今のこの状態は社会に対して逆巻いているのではないか? しかし何か違う、何か違うと思われてならなかった。ホームレスと化した酒巻は西を目指して移動してゆくことにした。そうすると地球の自転とは逆方向に動くことになるのではないかと思った。ある夜、橋の下に段ボールを敷き今夜のねぐらを作りながら、酒巻は見えぬ女神に祈った、俺は、逆巻いているのですか?
あなたの髪は逆巻きましたね
でも違うのです
逆巻きなさい、酒巻よ
なるほど櫛もブラシも使わぬ酒巻の髪は長くなってもつれ、逆巻いていた。酒巻髪・逆巻髪・きまきがみ。しかしそうではないと女神は言
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