骨と首の話 その2/hon
 
思うに、人間という生き物は奇妙なものだ。
 世に人間は増え、社会にインフラは整備されていったが、親切な人間を見出すのはさらに難しくなった。人は見知らぬ者に用心深くなり、旅人を遇する道は忘れられつつある。異邦の者に親切を表明するのに勇気が必要とされている。
 私のように流れつづける在り様には、確かにつらい時代になってきていた。
 私の生活の終焉は突然にやってくる。それがつい先日の雨の日のことだった。異変が私の体内に起こった。
 はじめは小さな固体が腕の中をストンと落下する感触だった。それはズボンのポケットに穴が開いて、そこから一つのコインが落っこちる感じと似ていた。それから体が引きちぎられる
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