水の庭園。/クスリ。
 
奔放の底にある無意味と、虚構に一瞬を切られる肖像画の非意味の拡大は、過去のパリの爛熟の幻想の中に於いてのみ平行である」、と、祖父は言った。
おそらくは「肖像画は嫌い」と言う単純を、難解に不意味に俗して呟いていた祖父の握る絵筆は、生の終焉に祖母の肖像を宿した。

その画は不可思議な重力に支配されたモノクロームの水の庭園と、死に至る前に加筆された水を見つめる仄かな橙色の点描の小さな人型で構成されている。

橙色に記憶と幻想を託した祖父の日記に告白された不可解な暗喩は、永劫に理解される事を諦めた愛のフォルムを今も語っているのだ。


/透明すぎる水は/
/夏の記憶に似ている/


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