水の庭園。/クスリ。
 


気がつくと僕の影は無数の水銀月灯に分解していた。

夏の記憶と同様にクリアだけれど遠い水が、そこにある。

月の光が鋭角に響いた夜の千年は透明な水に夜闇の時間を刻み、零れた月灯の記憶の色は深さのわからない透明にゆっくりと溶けてゆく。

月の波紋が蒼に揺れる水面を僕は見つめる。

水の静かな動きは淀みにも見えたが、その透明な揺らぎに屈曲された夜の底は驚く程近く、水底に輪郭の鋭い夜の影が産まれ鮮やかに揺れた。


/月の仄かを呼吸する/
/その庭園を微かに揺らすのは/


夜を掴もうと水に伸ばす僕の手を、不意に音無く寄り添う月の老兵がそっと停める。


/水だ/


微かに口唇を動した月の逆光に揺れ霞む老人は、祖父に似た水の余韻を放っている気がした。


/透明すぎる水の色/
/水の余韻が鳴り響く/



/トケテ シマウ ヨ/







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