遅れてきた少年の一切合財(その2)/生田 稔
漂う
刑柱につかねばと思い、ふと見ると
一本の横板をつけた木が
広場の真ん中に立っていた
側により、それに張り付いて
三度両手を広げる
そのとき天から声がして
「滅びの子のためにも、刑柱につけ。」と
アパートへ戻った
それから三日三晩部屋を出なかった
ただ、トイレのときだけ出た
部屋の窓は一つしかなく
建物のはざ間にあり
電気を消すと、真っ暗
しかし、あるかなきかの一筋の光が
いうならば、これがシェキナのひかりかも
その光の真下には長方形のラジオ・ケース
その上に手をくんで相撲をとってる
大熊と小熊の木彫りが
これはふたつのケルビムかも
三日三晩いたくら
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