骨と首の話/hon
 
三段ほどの床から平行な木組みの棚が見えた――
 その手前にそれはあった。
 もちろんぎょっとしたことを認めるのにやぶさかでないが、実際のところ、最初に骨を拾ったときから、なにか普通でないものに遭遇する覚悟を多少は固めていたので、そこにひとつの生首が置かれてあったことにひどくうろたえずに済んだと思う。
 むしろ本当に奇妙に思えたのはその生首が小さな唸り声を発しはじめたことであった。
 その生首の顎には濃い髭が生えており、頭部には乱れた長髪がぼうぼうと伸びており、眼窩は落ち窪んで、顔色は青白く、もし唸り声を発していなかったら、見た目だけでそれが死せる生首であることを私は疑いもしなかっただろう。
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