骨と首の話/hon
う。
私は気味悪く思いながらも、その首に顔を近づけ、漂ってくる饐えた生臭い空気に顔をしかめながら、耳をすました。首はたしかにかさついた声でしゃべっており、「苦しい、あああ、苦しい……」などと言っているのだった。
そのうち明らかに私の存在を意識していて、私に向かって話しかけていた。「聞いてくれ、私の話を……聞いてほしい……」
意識があるのなら会話もできるのかもしれない。「あなたは何なのです」私は首の耳元近くに口を寄せて言った。
「だが昨晩夢を見て……失われ、遠く……来た、私は……私は何なのか……と問われ……骨の……言わねば、言わねばならぬ……」
肺も横隔膜も持たない首から、乾いた唇を割って、わずかな空気をこすりあげて出しているようなか細い声が途切れ途切れに漏れてくるのはとても聞き取りづらく、またひどくしんどそうな感じだった。
「言いたいことがあるのなら、言ったら良い。私は聞きますよ」と、私はその首に答えていた。
「聞いてほしい……私の旅、私の事情を。私は長い長い旅をした。そうしてこの地まで来た……」
彼は語り始めた。
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