遅れてきた少年の一切合財(その一)/生田 稔
 
思う
その頃がたたって、今でも字が極端に下手
17、18、19、20、21、22歳
と猛勉強、結局幼い頃の英語しか手につかず
そればかりの勉強で、英文科に
夢のように心地よい、通学電車
上野の動物園で、合格の勝利感に一人ひたった
嬉しい嬉しい、あんなに嬉しかったことは、
一生に一度もない、
だけど、それからが巧くゆかぬ、
下宿では何故か憎まれる
下宿のおばさん、合い宿の学生たちとうまくゆかぬ
一学期終わっても帰りたくはない
帰郷すれば、きっと近所がうるさい
京都の不良少年は浮かばれない
後ろ指さされた、俺だもの
きっと問題になるに
そんな不安で帰郷はできない

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