少女と石槍/楢山孝介
結婚も、戦争への参加も許す
それぞれに石槍を渡す
さあ行け
行って殺してこい」
少女はカルムの知らない歌を歌っていた
誰も見ていないと思ってか
奇妙なステップを踏んで躍り出した
カルムは敵の姿を
争いの後に村の大人たちが運んでくる
物言わぬ裸の死体でしか見たことがなかった
長(おさ)に石槍を渡された時には
心が猛り、躍ったのに
いざ生きている女を目の前にすると
大人になどならなくてもいいと思った
小川を見下ろす茂みに身を潜めながら
カルム同様、セツもヨクも固まったように動かなかった
三人を案内してきた年長の先導者は舌打ちしながら
彼らの背中を蹴り飛
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