Arisaema serratum/佐々宝砂
 
葉は濃緑、
毒々しい黒紫の縦縞の花は、
鎌首をもたげる蛇のかたちに開いて、
その地獄に虫が堕ちるのを待っている、
おのれの栄養にするためにではなく、
ただおのれの受粉のために、
この花は虫を殺す、
そして毒の娘はこの花を愛して口づけする、
Arisaema serratum と呼ばれるこの花に。

毒の娘は再び嘆息する、
この世にもあの世にも毒など存在しないのだと、
ただ物質が存在するだけなのだと、
それら物質が、
人間にさまざまな作用をもたらすだけなのだと、
毒の娘は知っている、
夢想のうちに語られた毒の娘は知っている、
毒の娘である自分は、
本当のところ、
[次のページ]
戻る   Point(0)