彼女は一冊の詩集を抱えて/ふるる
たちが丹精込めて作ったものだ
口に含めば
牛の乳の丸みや
チーズ棚の古臭い匂いまで蘇る
少女たちはもうひとっ走りして
ベリーを摘む
父さんが持ってきた切り株は
椅子に丁度よかったわ
蝶も座りに来るから
夕焼けはここに座って見るのがいいの
毎日違っていて
毎日素敵
花束みたいって思う
紫のリボンの
いつからか私
一冊の詩集を持つようになったわ
少し重いのだけれど
持っていると安心する
ここには多分書いてあるの
私が今まで見てきたすばらしい景色
丘を渡る風や
刈り取った草の匂いや
馬の背中の手触り
雨上がりの葉っぱの冷たさ
夕暮れに灯すラ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(26)