彼女は一冊の詩集を抱えて/ふるる
 
すランプの灯り
年とった犬のため息
野いちごのすっぱさ
それから白いレースがなびく窓や
窓から乗り出して
大好きな人に手をふる私も

一つ残らず
書いてあるの

それから何十年もたち・・・・

朝焼けに霧
絞りたてのミルクのような

風はそっとページを閉じる
彼女は年老い
永い
眠りについたのだから

彼女は生涯大切に一冊の詩集を抱えていた

全てのページはぴったりとくっついていて
開くことができなかったけれども


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