彼女は一冊の詩集を抱えて/ふるる
 
明け闇に稲妻
白い栞のように

風は慌ててページをめくる
朝を探している


井戸につるべは落とされて
鏡が割れるように
宝石が生まれるように
しぶきは上がる

あたたかい頬で受け止めて
丸っこい名前の少女は微笑んで
枯れかけたアマリリスにも水をやる
亜麻色の髪はちょんと結ってある

スカートをひるがえしたのは風
さっと午後を運んでくる
黄色い光の
牛や羊たちがあっという間に草を食べ
青く短くなった食べ跡から
バッタやイナゴが飛び出して
コウノトリが太いくちばしでそれらをついばむ
子供たちのために

午後のお茶にはチーズが出される
母さんたち
[次のページ]
戻る   Point(26)