彼女は一冊の詩集を抱えて/ふるる
明け闇に稲妻
白い栞のように
風は慌ててページをめくる
朝を探している
朝
井戸につるべは落とされて
鏡が割れるように
宝石が生まれるように
しぶきは上がる
あたたかい頬で受け止めて
丸っこい名前の少女は微笑んで
枯れかけたアマリリスにも水をやる
亜麻色の髪はちょんと結ってある
スカートをひるがえしたのは風
さっと午後を運んでくる
黄色い光の
牛や羊たちがあっという間に草を食べ
青く短くなった食べ跡から
バッタやイナゴが飛び出して
コウノトリが太いくちばしでそれらをついばむ
子供たちのために
午後のお茶にはチーズが出される
母さんたち
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