【小説】影市場/なかがわひろか
ら見れば40代半ばの影が多い。
人は40代半ばになって、いろいろと訳ありの事態に遭遇することがあるようだ。
もっとも多い影は宿主だけが自殺に成功し、死に損なった影たちだ。
彼らは寿命を迎えるまでまだまだ時間があるし、老いぼれるにも早い。40代半ばの宿主候補がやってきたときは、我先にと皆が声を張り上げるので、耳を覆わずにはいられなくなる。
何も知らない宿主候補たちは当然の様に自分よりも若い影を選ぶ傾向にある。
ただし、ここでは宿主と影の年齢差は5歳までとされている。
若い影ばかりが売れて、年寄りの影が残ると、在庫過多になり市場が崩壊する畏れがあるからだ。
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