遠ざかる夏/soft_machine
 
かの沈黙に
竹を割ってゆく
熱風に静かな墨を滲ませ
問われたそれに
ひやっとして泣く
あなたは それが美しいと言って泣く

裸布、筆痕、蕎麦の匂
山猫、産婆、黒雲の精
眼底に熱写された童唄の世界
枯れ果てた因習に耳を澄ますと
全て乾いて
剥き出しにされたそれ
私は神社の外で玉虫が割れて
ダムは日々懐をヘドロが膨らませていた
あなたは底々の家が魚に住まれ
水は足を膝まで歪ませ
凌霄花が道に垂れ
背中は鳴き続け
土葬の賑わいの裏で訪問者が
立ち尽くし帰れないでいる
深い谺に侵されてゆく廃屋
届かないもの
夏は今年も本当の姿を見せぬまま
空は真空で敷かなく
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