遠ざかる夏/soft_machine
なく蒼でない
通り雨が土間を這うそれが
白い筋が闇に浮ぶそれ
骨を濡らし始める
遠ざかるもの
豚舎の娘が宿題の絵日記を抱え込んだまま
明日を考えることもなく活かされ 許され
仔牛は干草の重さで 諸事の芯を嘗め取り
命の短さを嵌めあい 眺め尾を振る
饒舌で無血な
陰りない陽光
赤子の夢見
線虫の蠕動
へそのおに静かに湛える
爛れたアスファルトに砂を敷く
全て乾いて
回り続けた
車窓を震わす孤りきりの汽笛
マンホールに僅かな塵が降り 回る
回って、それは
団扇風 蚊屋遊び 梟の密会
山火事 腐った畳 蛍の葱灯
歪んでゆくのは
あなた 遠く手招く遥かな海
鵲=かささぎ
朱=あけ
解ける=とける
矢部=やべ
耳納=みのう
凌霄花=のうぜんかずら
諸事=もろごと
無血=むけつ
蠕動=ぜんどう
葱灯=ねぎあかり
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