有棘鉄線を抜け、宵に至る。/クスリ。
という背徳の幻想に吐いていない嘘を偽の罪悪で纏う虚構の子供は、目を閉じずに錆びた棘を壊す。
「有棘鉄線の奥で、鬱蒼と緑青を放つ配電盤の主幹をカチカチと弾く隻腕の乞食が過去の物乞いを具現化しているが、銭は投げ入れられるわけもない。」
、と、赤錆に濡れた偽子供は不明を呟く。
もちろん、その密やかな慟哭にも、整合性は無い。
淀みに散る鉄線の欠片に降り舞う光は既に橙色に焦燥を纏っており、緩くチラチラと混じる赤茶のブラウン運動に透明を語っている。
辿る、見えざる哄笑の履歴に潜む廃物の義手は、砕け散る鉄棘に埋もれてしまう。
脈動を捜す独白はいつも虚ろだ。
虚ろ。、と、呟く
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