有棘鉄線を抜け、宵に至る。/クスリ。
 
無い。


「照り給う夏の傲慢を鬱々と許諾するふりが大人の証であるならば、その欺瞞を拒絶しながら平然と嘘をつくのは子供の夏の特権である。、と、呟き、廃屋を這う錆びた有棘鉄線の赤茶を無造作の衝動を具現した石にて不器用に叩いているのだ。」

「鉄棘の赤粉が干からびた咳と赤茶けた痰を導き墜ち。濁り、粘り、は襤褸に垂れ、皺に絡む蓬髪は、震えているのだ。」

特権の虜囚である。、と、撓む棘を叩く錆びた躯は呟く。

子供である事を望むのでは無く、それが不可能であるからそれを望むという、不可能性に対する暴虐。
だが、そこに神を目指す視線は無い。

有棘鉄線の先、形而上の禁忌に突入するとい
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