忌々しきは恋の凶事/錯春
のは涙ではなく、ヒカリゴケの胞子であった
ヒカリゴケの胞子は土へ落ちる前に ふわり と浮かび上がり
金色の萌黄色の糸を引き、僕の周りを覆った
まぁ なんて見事なヒカリゴケ。
飛び起きると
長かった髪をばっさり切り落とした春志乃さんが、リボンの無いセーラー服姿で しゃなり と立っていた
「おまじないを掘り起こすなんて無粋ですこと。」
シャム猫の佇まいの儘、彼女はカラコロと笑った
「どうして髪を切りなすったんです、辛い恋でもしたのですか。」
「女が髪を切るのは何も失恋に限ったことではございませんわ。」
「だからって、勿体
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