夜の軋み ★/atsuchan69
 
軋み、
白い合成樹脂の吊革を見上げては
いつか公園で乗ったブランコ、
たわわな胸をゆらす女の歩くさまを想い
するとまた淫らな血が騒ぎだす

やたら空席の目立つ、
長い年月を乗せたシート
その疎らな隙に乗じて
朝夕の犇めく乗客たちの残像は、
足早に何処へともなく
遠く走り去ってしまった

別れ際に足りなかった言葉が
急いたこの胸を焦がし、
古びた夜の闇に鳴る踏切へ
いつしか進路を遮られては
想いは置き去りのまま
夜の軋みに掻き消されて

窓の硝子に映るのは、
裏切る者の顔

歓楽街の夜景を透かして
巡りあうことのない筈の言葉たち
 (唇から 唇へ

[次のページ]
戻る   Point(12)