無題/hon
 
で、俺は燃え盛る炎というものが大変好きだった。後に、俺が人々に火の祭りを祀らせるようにしたのはそのためである。


俺は川まで老ジグの死体を担いでいって、それを川に流した。口に硬貨を一枚押し込んでやった。俺は流されていく死体を眺めていた。しばらく俺は死について考えた。
俺は俺がどこから来たのか知らないが、死すべき者を食し、死ぬべき者たちと同じ食物を口にした以上は、俺自身も死ぬのだろうかと考えた。
死とは生ける者の敗北であるかも知れないが、死すべき人間にその敗北を免れる者はいない。それは遅いか早いかの違いである。生きる人間のもつ野望とは不死の存在となることではないのか。ともあれ、いまの俺に
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